紅白歌合戦で最も長く歌ったのは誰か 歌唱時間で比べる歌手の差
2019年の第70回紅白歌合戦では50以上の歌手が歌っていた。
放送時間が4時間30分とはいえ、50以上もの歌手が歌うと、一人の持ち時間は短くなる。
ぼんやり見てると、あ、もう終わったと感じるし、もっとぼんやりしてると3曲くらい終わってたりする。紅白歌合戦はだいたいぼんやり見てるものなので、いつのまにかどんどん進んでいる。
歌唱時間が1分台の歌手がそこそこいる
いったい一人どれぐらい歌っているのか、少し計ってみた。
歌われたのは53曲だった。
1人の歌手が自分のメドレーを歌った場合は1曲として数え、別の歌手がメドレーを歌ったときは(ディズニー映画の主題歌メドレー)は、別に数えた。(ディズニーメドレーは3組)。
歌手として数えると52組になる(嵐が2回歌っていた)。
ただ、組と言っても一人きりで歌ってる人も多いので、厳密に言うなら「52の人とグループ」というのが正しいのだろうが、面倒なので“組”でいきます。
短いと1分台の歌唱時間である。
ダイアモンド☆ユカイは「ディズニーメドレー」の1人だったので1分26秒ほど、ジャニーズJr.もHey! Say! JUMPの前座のように歌っていたので1分28秒。
企画ものであるおしりたんていは1分32秒。
ディズニーメドレーの1人の中元みずきが1分41秒、「紙の鶴」の丘みどりが1分45秒でした。
1分台ってのは、けっこう短い。
だいたい2分だったのは8組。
GENERATIONS、純烈、AKB48、日向坂46、山内惠介、LISA、島津亜矢、天童よしみ。
私の計測で1分56秒から2分3秒の歌唱時間だった。
じつは、歌唱時間の計測は細かい部分が微妙である。
「歌手だけが画面に映っているが歌い出さない一瞬の間合い」「イントロに入ったが司会者が紹介を続けている時間」「歌い終わって音が消えているが、手を広げるなどのパフォーマンスが続いているあいだ」などを計測にいれるかどうかで1秒から3秒くらい変わってくる。いちおう視聴者として眺めていて、あ、終わった、とおもった瞬間(始まったとおもった瞬間)というのを基準にした。以下の歌唱時間は私が個人的に計測したものである。
坂本冬美も氷川きよしも五木ひろしも2分台の歌唱時間
2分台の歌唱時間がもっとも多い。
まず2分台でも短いほう。(2分17秒から2分29秒)
坂本冬美、aiko、三山ひろし、Hey! Say! JUMP、中村倫也&木下晴香、Kis-My-Ft2、Little Glee Monster、水森かおり、関ジャニ∞、三浦大知、TWICE。(短い順、以下同)
この11組でした。
2分台後半(2分33秒から2分54秒)は以下の9組。
Official髭男dism、欅坂46、King & Prince、氷川きよし、AIの美空ひばり、郷ひろみ、五木ひろし、乃木坂46、DA PUMP。
竜に乗った氷川きよしは2分35秒だった。
欅坂46も2分35秒で、でもあの激しいダンスを2分半踊ってるってのは、たぶん1000メートルを全力で走ってるようなものだとおもう。平手友梨奈は全身を剣に変え、まわりのものを斬りまくってるように見え、迫力がすごかった。大丈夫だったんだろうか。彼女は自分も斬っちゃうところがあるからちょっと心配である。
また、復活した「人工知能の製作」美空ひばりは2分40秒だった。セリフも入って、生きていた彼女を覚えてるすべての人を揺さぶる映像だった。ぼんやり見てたので、ちょっと胸に迫ってきた。年齢が変わってないように見えたので、つまり私は二十歳上だった彼女の年齢を越えてしまったことになるのだが、あれは亡くなったときのまま、時を越えてゴーストとして現れたととらえればいいのだろうか。4分歌われたら、いろんなことを考え出して怖くなりそうだったから、2分40秒というのが適正だったようにおもう。
3分台の大物ラインにKing Gnuや星野源、菅田将暉
3分を越えて歌った歌手はぐっと少なくなり、大物感が出てくる。
3分3秒から3分18秒の3分台前半は4組。
石川さゆり、King Gnu、ビートたけし、星野源。
ビートたけしが歌ってるとNHKが浅草演芸ホールに見えてくるから、すごい。星野源は、その前の「おげんさんといっしょコーナー」から連続で出ていて(早変わりも見せていた)けっこう長い。
3分32秒から3分57秒の3分台後半は5組。
Foorin、菅田将暉、いきものがかり、Perfume、ゆず。
Foorinは一番最初に出てきたユニットで、NHKの推してる『パプリカ』を歌った。外国語バージョンも加わり、会場中で繰り返し歌ったので長くなっている。
3分台というのは、歌単体で聞いたらさほど長くはないはずだが、紅白歌合戦では特別な見世物感が出てくる。
トリ2人を越えてもっとも長く歌ったのはRADWIMPS
そして4分を越える長い時間を任されたのは10組だった。(嵐の重複があるので11曲)
4分02秒、Superfly「フレア」(いまの朝ドラ『スカーレット』の主題歌)
4分23秒、椎名林檎「人生は夢だらけ~お願いガッテン篇~」
4分25秒、松田聖子「Seiko Best Single Medley」(4曲メドレー)
4分29秒、福山雅治「デビュー30周年直前SPメドレー」
4分33秒、NHK2020ソング「カイト」(嵐のビデオ)
4分37秒、松任谷由実「ノーサイド」
4分38秒、竹内まりや「いのちの歌」
4分56秒、MISIA「アイノカタチメドレー」(紅組のトリ)
4分56秒、嵐「紅白 スペシャルメドレー」(白組のトリ)
5分12秒、YOSHIKI feat.KISS<YOSHIKISS>「Rock And Roll All Nite」
6分03秒、RADWIMPS feat.「天気の子」
(以上、すべてのタイムは個人計測です)
もっとも長く歌ったのはRADWIMPS。ラッドウィンプスです。
2019年のヒットアニメ新海誠監督の『天気の子』から、オリジナル映像もはさんでの2曲だった。2曲をしっかり歌うと6分を越えてしまうのだ(1曲目はfeat.三浦透子)。新海誠の映像が、かなり2019年紅白の目玉だったのだろう。
もうひとつの目玉はアメリカのロックバンドKISSの出演。
YOSHIKIがKISSメンバーと一緒にKISSの代表曲を演じた。あらためて1970年代のロックミュージックを聴くとずいぶんと優しく聞こえる。当時は破壊的におもえたものが、ゆったりと聞こえてくるから不思議である。
歌唱時間が長かった歌手は、代表曲を何曲か続けて歌うメドレーが多かった。
1曲をしっかり歌って長かったのはユーミンの「ノーサイド」と、竹内まりや「いのちの歌」である。
「ノーサイド」は発売されたときから聞いているけど(1980年代のユーミン絶頂期だったから)、この歌を聞いて思い出す風景はラグビー早明戦で、国立競技場をいっぱいにしていた早明戦でしかなく、そして「負けてしまった残念な気持ち」の歌として聞いていたので、世界ベスト8の強い日本代表の映像と重ねられると、ずいぶんと違う地平にやってきたな、とそれはそれで感慨深い。
紅白歌合戦4時間半を通して見ていてもっとも印象的だったのは、けん玉を失敗したときの綾瀬はるかだった。何というか、とても綾瀬はるからしいシーンだった。愛敬にあふれている。
あらためてわかったのは、紅白歌合戦は、1人(1組)2分ほどしか歌わせてもらえない、ということである。
紅白歌合戦に出るのは、多くの歌手の目標だろうが、その先には「紅白歌合戦で4分以上歌わせてもらう」というラインがあるのだろう。
紅白歌合戦は、出ている歌手が楽しそうに見えるところがいいなと、4時間半セットを3回見ておもった。