「世界で例外の低さ」食料自給率38%の日本が直面する深刻な危機
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著です。2023年7月26日発売の幻冬舎新書『買い負ける日本』は、調達のスペシャリスト、坂口孝則さんが目撃した絶望的なモノ不足の現場と買い負けに至る構造的原因を分析。本書の一部を抜粋してお届けします。第8回。
経済力が落ちた日本の食料自給率が抱える課題
よく知られる数字だが、カロリーベースの食料自給率は38%だ。主食のコメは75%で健闘しているものの、小麦は17%、畜産物も16%にすぎない。カロリーベースだけではなく生産額ベースも下がっている。 もともと日本は記録の残る1930年には小麦の自給率は67%だった。戦後まもなくも40%を超えていた。しかし米国からの要請で過剰な小麦在庫を引き受け、学校給食でもパンを採用した。次にコメが過剰となり、小麦は世界への依存が高まっていった。 ロシアとウクライナは小麦の世界輸出量の3割を占めていた。戦争により、あるいは政治的に同二国からの供給が減ったのだから世界的な高騰は当然だった。どの国も世界価格に影響を受ける。アメリカ産やカナダ産も上昇した。 政府は農家減少に歯止めをかけようとしたり、国内堆肥の活用、国内での小麦の生産への補助金を出したりしている。2030年までには食料自給率を45%までに伸ばそうとしているが、楽観はできない。 さらに、重要な穀物にトウモロコシがある。2020~2021年にはトン100ドル強だったのが2023年初頭には250ドルほどに急騰している。中国が米国からの輸入を増やしている。米中経済戦争の結果、中国が交渉の末、米国に米国産の輸入増を約束した結果だ。中国は米国に依存する形になった。そこでウクライナ戦争が起き、取り合いが本格化した。 ウクライナは世界のトウモロコシ輸出の10%強を占めていた。食料生産地帯を被害地とする戦争は市場を高騰させた。さらにウクライナの農家は穀物を長期保存する空調設備を有していない点も痛手だった。また、世界各地で天候不順もあったし、穀物を使ったバイオ燃料の需要も高まった。さらに日本は調達困難を味わった。 日本で食料・農業・農村基本法が策定された1999年から24年が経った。同法は食料の安定供給の確保を狙うものだった。ただ、そこから食料自給率は横ばいで上昇していない。ただ、よく横ばいで踏みとどまったというべきか。農業に従事する人は123万人でほとんどが60歳以上。さらに廃業を選ぶ人たちもいる。当然、農地も総産出額も減っている。